いきなりですが、クイズです!
下写真をご覧ください。これはパナ・ケミカルのお家芸であります発泡スチロールのリサイクルの現場の一コマです。
卸売市場で排出された発泡スチロール(EPS)製の魚箱なのですがこの中に一つだけEPS以外の素材でできた魚箱が紛れ込んでいます。どれだかわかりますか?
答えは後ほどという事で。
発泡スチロールは省資源(ほとんど空気)で安価、成形の自由度が高く、断熱性や衛生性にも優れている極めて優秀な素材です。
そのため、魚箱などの鮮魚・青果物用の包装容器や断熱材などの建築資材など様々な分野で利用されています。
そして発泡スチロールという素材が他素材に比べて大きなアドバンテージを持っている点に「リサイクルシステムの確立」というものが挙げられます。
皆様ご存知の様にパナ・ケミカルにより確立された発泡スチロールのマテリアルリサイクルシステムは「J-EPS」(日本発の発泡スチロールのマテリアルリサイクルシステム)として業界的にも認知されており、”リサイクルの優等生”ともいえる存在です。
しかしながら、このリサイクルの優等生が成立するためには、処理作業に携わる「ヒト」と優れた「技術(装置)」のマッチが必須の要件です。
卸売市場では用途に応じて様々なタイプの魚箱が排出され、また様々な汚れが付着したり、異物が混入したりした状態で処理に供されています。
上の写真に示します様に、梱包用のPP製の紐が混入していたり、様々な紙ラベルが貼り付けられていたり、魚の血液やアラが付着した状態の発泡スチロールが処理作業の現場に持ち込まれています。
この様な雑多な発泡スチロール製魚箱に付着した汚れや混入した異物を目視や触感で認識し、これを手作業で除去するのは作業に従事する「ヒト」の仕事です。
処理作業に従事する作業者の皆様は、必ずしもプラスチックに関する技術的な専門知識を持ち合わせていない事も多くありますが、現場での長年の経験に基づき、リサイクルに適した素材を選り分ける”能力”を養っています。
この能力こそが、発泡スチロールリサイクルがリサイクルの優等生たる所以であります。
そこで最初のクイズに話しが戻る訳なのですが、汚れや異物の除去と共に重要な作業に「異なる素材の分離」というものがあります。
発泡スチロールはポリスチレン(PS)を発泡させたものでありますので、これを破砕・脱泡処理を施した処理物(資源プラ)はポリスチレン単一の素材であるべきです。
そうしなければ、再生プラスチック原料に加工した場合、物性が不安定になってしまい、商品としての市場流通性が著しく低下してしまいます。
故に汚れや異物の除去と共にポリスチレン以外の素材を識別し、処理作業のラインから取り除く必要があります。
さて、先のクイズの答えですが、下写真に示します。
EPS製の魚箱に混じって発泡ポリプロピレン(EPP)製の魚箱が一つ混じっていました。
分かりましたか?ちょっと見ただけでは分かりませんよね。
見た目はEPSとよく似ているのですが、触感や発泡ビーズの形状が多少異なるとの特徴があります。
でも、大量に排出されたEPS製魚箱をどんどん手作業で慌ただしく処理していかなければならない状況下で、いちいちじっくりと魚箱を観察する時間は惜しいです。
実際、現場の作業者は、搬入された処理物を一瞥して異なる素材の可能性がある”あやしい”魚箱に目星をつけておいて、処理作業を進める中でちょっと触るだけで見事に識別して、ラインの外へ除けています。
これはスゴイです。
長年の経験に培われた”カン”によって見事に識別を行っています。
最近は様々なプラスチック素材の識別装置が販売されていますが、いちいち測定していたら処理作業は遅々として進みません。
やはりヒトこそが”最高の識別装置”であり、これは長年の経験に基づいています。
この長年の経験に基づいた「技術」こそが処理事業を行うための最大の資産であり、経営者はその人的な資産を確保し育てる必要があります。
優れたヒトの集積と、それぞれの能力が発揮される仕組みを創り上げる事が、マテリアルリサイクルの理想形を築き上げるための礎となるのです。